魂の文学的良心

感想とかレポとか日記 

最近読んだミステリ小説の感想を語らうの段 その4

 

読後感情羅列録です!相変わらずミステリーしか読んでないよ!ここ最近は特に東野圭吾さんの本ばかり読んでたので、今回は東野圭吾さん登場率が高め。

以下から最近読んでおもろかったミステリー小説の大雑把なあらすじと感想を書いていく。核心的なネタバレには触れないようするけど、中には何書いてもネタバレになっちゃうようなのもあるから、配慮しきれんかったらスマン。

前回がこれ↓

ciiiars.hatenablog.com

 

 

 

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

 

 

アヒルと鴨のコインロッカー/伊坂幸太郎

<あらすじ>大学生の椎名は、引っ越し先のアパートで出会った河崎に、本屋襲撃の共犯を持ち掛けられる。河崎の目的は、「同じアパートに住む外国人への贈り物に」と、一冊の広辞苑のみ。その真意は一体何なのか?

 

『椎名』が語る現在の出来事と、『琴美』が語る2年前の出来事、二つの時系列が交互に語られていくスタイル。2年前の河崎、琴美、ドルジ3人の絡みが青春群像劇みたいな爽やかさアリ、ペット殺しに怯える緊張感もあり…、この本ってジャンルで言ったら何に入るんだろう?と考えながら読み進めて行ったら、終盤は正真正銘ミステリーだった。ブータン人のドルジや、プレイボーイの河崎など、キャラたちがそれぞれ独自の宗教観や考えを持ってて、それが不思議と説得力と魅力にあふれてて良かった。ハッピーエンドではないんだけど、読後は爽やか。ただし動物虐待の描写があるので、苦手な方は気をつけてね。

 

パーフェクトブルー/宮部みゆき

<あらすじ>高校野球界のスーパースターである諸岡克彦が、放火殺人の被害者となった。蓮見探偵事務所の加代子・元警察犬のマサ・克彦の弟の進也の3人は、事件の真相究明に乗り出す。

 

元警察犬のマサが語り手の、一風変わった視点から読み進めるミステリー!設定が少々特殊なので、物語自体は軽く読めるのかな?と思いきや、社会問題を題材にしたかなりヘビーな内容だった。初っ端からいきなり宮部作品の洗礼を受けることになるから、可愛い設定だからと油断してはいけない。かなり初期の作品みたいだけど、安心と信頼の超ビッグスケールで、ワクワクが止まらん。そんで終盤のマサにしか出来ない活躍の数々に、拍手喝采を送りたい。

被害者の諸岡克彦の弟、諸岡進也がすごく魅力的なキャラ。颯爽と現れて加代子のピンチを救い、ヤンチャで掴みどころがないように見えて繊細な心を持ち、勇敢で大胆かつ頭もキレる。おまけにえくぼが可愛い。なにそのスペック……諸岡進也のオタクになりそう。続編の『マサの事件簿』にも進也が登場するらしいので、そちらも読まないと。

 

長い長い殺人/宮部みゆき

轢き逃げは、実は惨殺事件だった。しかし被害者の妻は、犯人のことを一度も聞こうとしない。さらに被害者には多額の保険金が掛けられていて、妻には完ぺきなアリバイがあった。様々な関係者の『財布』が語る事件の裏側から、やがて驚愕の真相が明らかになる。

 

今度は各関係者の財布が語り手となり、持ち主の言動や事件との関わりから真相を暴いていく。設定が斬新でおもしれぇ~~!!それぞれの財布たちは、視覚・聴覚・思考力を有しているけど、持ち主に干渉する力は持ってなくて、伝えたいのに伝えられない歯がゆくてハラハラドキドキな展開が目白押し!

財布の持ち主についての人物像や出会いの経緯が毎章語られるんだけど、さりげないエピソードのなかにその人の人柄や人生がぎゅっと詰まってるようで、どの財布も愛情たっぷりに語ってくれるのでちょっと泣きそうになっちゃった。この本を読んでから自分の財布を慈しむようになりました。(トイストーリー鑑賞後の子ども?)

ちょっとネタバレかもしれないけど、宮部作品の『模倣犯』に似たものを感じて、おぞましい悪意に鳥肌止まらんかった。

どんどん橋おちた/綾辻行人

<あらすじ>ミステリ作家の綾辻行人の元に、とある青年から自作のミステリ短編が持ち込まれた。彼の挑戦を受け、様々な難事件の『犯人当て』に挑む短編集。

 

綾辻行人さんの元に様々な事件が舞い込んでくる…というシチュエーションの、遊び心満載の短編集。謎解き自体はシンプルなのに、巧みな文章で真相が隠され、どの作品も一筋縄ではいかない。読み返すとヒントもしっかりと散りばめられてて、綾辻さんのしたり顔が浮かんでくる。中でも『伊園家の崩壊』がめちゃくちゃ不気味でブラックで面白かった。一時期Flash倉庫で流行ったやりすぎパロディーを軽く超えてる。そして各作品に出てくるキャラに、タケマル(我孫子武丸)とかリンタロー(法月綸太郎)とかいて、高校生の身内ノリみたいなことをしていてほっこりしちゃった。

 

そして扉が閉ざされた/岡嶋二人

<あらすじ>富豪の一人娘が、旅行先で不審な事故死を遂げる。事故からしばらくし、当時彼女と一緒にいた男女4人が集められ、彼女の母親によって地下の核シェルターに閉じ込められてしまう。あれは本当に事故だったのか?脱出を試みるうちに、彼女の死の真相が明らかになっていく。

 

閉じ込められた4人の誰かが殺人犯で、回想を交えて推理しつつ、地下シェルターからの脱出も試みるお話。閉鎖感のある展開が続くけど、次々出てくる脱出のヒントとか死の真相に近づくキーワードにワクワク。脱出ゲーム好きにはたまらん。事件のトリック自体は結構シンプルで分かりやすいけど、そこに至るまで怪しい人物が次々と移り変わる。誰かが嘘をついているけど、そうはと思えない迫真の弁明とアリバイがみんなにあって、誰も信頼できなくなっていく。そして、被害者込みでキャラがみんな自分勝手で性格キツめで、なんていうか…絶対関わりたくない集団。発行が40年近く前なので、キャラ達の異様な恋愛至上主義の価値観にまったく寄り添えないけど、だからこそこういう事件が起きるんだろうな…。読後はイヤ~なモヤモヤが残るけど、最後の最後まで犯人が読めなくてワクワクできる作品。

少女/湊かなえ

<あらすじ>高校2年生の由紀と敦子は、転校生の紫織から「親友の自殺を目撃したことがある」と告白を受ける。そこから「人の死を見てみたい」と思うようになった二人は、お互い打ち明けずに、病院と老人ホームにそれぞれボランティアに出向く。そこで出会った人々からもたらされる、由紀や敦子の心境の変化。そして事態は衝撃の結末に向かうことに。

 

様々な経緯から仲たがいしてしまった少女たちが、ボランティア活動を通して成長し友情関係を取り戻す、青春ヒューマンドラマ…かと思いきや、ラストはちゃんと湊かなえさん色がガンと押し寄せてくる。他作品の『白雪姫殺人事件』や『夜行観覧車』とかに出てくる、湊かなえさんの描く「嫌な女」が凄くリアルで、毎度気分が悪くなる。(褒めている)

 

龍神の雨/道尾秀介

<あらすじ>義父の元で暮らす添木兄妹と、義母の元で暮らす溝田兄弟。添木兄は義父の殺害を企て、一方溝田兄は義母を試そうと軽犯罪を計画する。二組の兄弟の運命は交差し、ついに第一の犠牲者が…。

 

最初は二組のきょうだいの生活が描かれてて、ここからどうやって物語が交差するんだろう?て思ってたら、後半怒涛の急展開で、一気読みさせられました。トリックがめちゃくちゃ巧妙でおもしれ〜〜〜!!あちこちに散りばめられた謎の全てを、最後一気に掻っ攫っていく答え合わせ、気持ち良すぎ。ミステリー部分もすごく濃いけど、メインの人間ドラマがめちゃくちゃ熱い。向けられる愛情を信頼するのって、こんなにも難しいんだなぁ。

 

聯愁殺/西澤保彦

<あらすじ>連続殺人事件の唯一の生き残りである梢絵は、元刑事やミステリ作家などで構成された推理集団『恋謎会』の集会に呼ばれていた。犯人未逮捕の連続殺人事件の真相や犯人の行方などについて、熱く議論が交えられるが…。

 

同作者の『神のロジック』みたいな感じで、序盤は推理合戦が繰り広げられる。キャラたちが独自の目線で辿り着いた推理を披露するくだりが、会話劇みたいで楽しい。どの推理も面白い所を突いてるんだけど どれも小さな穴があって不完全で、でも着々と真犯人には近づいていってる緊張感。ラストの衝撃波は安心と信頼の西澤保彦。そして全体にそこはかとなく漂う厨二感に、心がくすぐられっぱなしだった。

 

仮面病棟/知念実希人

<あらすじ>療養型病院にコンビニ強盗犯が籠城し、自ら撃った女の治療を要求してきた。事件に巻き込まれた外科医の速水は、女の治療をしながら、病院からの脱出を試みる。しかしそんな中、病院に隠された重大な秘密を知ってしまう事に。

 

脱出の糸口を探しながら 病院に隠された秘密も暴くという、アドベンチャーみたいなワクワク感あり、パニックサスペンスの緊張感もありで、話のテンポも良くてグイグイ読まされました。初の知念実希人さん作品だったけど、満足感がすごい。映画化もされてるらしくて、主人公の速水を演じたのは坂口健太郎さん。私の想像と違ってめちゃくちゃイケメンだった。この速水なら多少キモくても許す。

 

葉桜の季節に君を想うということ/歌野晶午

<あらすじ>元私立探偵の将虎は、友人から 悪質な保険金詐欺の調査を依頼される。同じ頃、将虎は自殺未遂をした謎の女『さくら』を救い、ふたりはデートを重ねる仲となる。保険金詐欺の真相究明と、将虎の恋の行方がやがて交錯し、事件は意外な方向に。

 

主人公の将虎がとにかく活力の鬼で爽快。将虎は公的な力とか一切ないので、ガンガン危険な違法捜査に乗り切ってて、泥臭いハードボイルドみもあって読み応えがすごい。性にだらしなかったり見栄っ張りだったり、人間臭さが全開で、将虎のこと一気に好きになっちゃった。本の帯やポップでさんざん書かれてるので言っちゃうけど、後半は凄まじいどんでん返しの応酬で、口がポカーンになります。記憶を消してもう一度読みたい。実はワタクシこの本を読む前に、知り合いからこの物語の根幹にかかわる特大ネタバレ喰らってしまいまして。(許さん…) でもそれ知った上でもかなり衝撃の展開が目白押しで、ものすごい充実感でした。美しいタイトルだけど、最後に意味を知るとより美しく感じる。

 

パレード/吉田修一

<あらすじ>都内の2LDKマンションでルームシェアをする、男女4人の若者。それぞれが事情を抱えながらも、上辺だけの付き合いだからこそ成り立つ共同生活だった。そこに自称『男娼』の若い青年が転がり込み、徐々に小さな波紋が広がり始める。

 

男女5人がルームシェアをしていて、全5章でそれぞれのキャラの視点でルームシェアの様子などが語られていく物語。序盤は和やかでクスッと笑える日常が描かれる青春群像劇。でも絶妙なバランスで成り立っていた関係性が、途中から一気にきな臭くなってきて、そこからが怒涛に面白かった。私も登場人物の事を勝手に分かったつもりになっていたけど、決してそんなことはなかった。自分も多分無意識のうちに他人にも家族にすらも見えない壁を張ってて、でもそこに悪意や騙す意図は微塵もなく、その公の自分も、ちゃんと私の自分の一部なんだよな。物語は背筋が凍るような方向に進み、嫌な読後感が残る。

 

どちらかが彼女を殺した/東野圭吾

「信じていた人に裏切られた」と電話で話したのを最後に、妹が自殺を遂げる。第一発見者となった兄の康正は、現場の不審な点から、自殺を装った殺人事件だと勘付き、独自の捜査から殺人を絞り込む。復讐心に燃える康正に、加賀恭一郎が立ちはだかる。

 

俺たちの加賀恭一郎シリーズ第3作目!安心と信頼の洞察力と勘の鋭さで、事件の真相にガンガン迫っていく加賀恭一郎と、そんな加賀の魔の手(魔の手ではない)から逃れて復讐を実行させたい被害者遺族による心理戦!加賀恭一郎と康正が2人とも部署は違えど警察の人間ということで、お互いにリスペクトを以って接しているのが上品で良い。容疑者と康正の命を懸けた闘いの緊迫感がすさまじく、手に汗握る展開の連続。そして加賀恭一郎はどこまでも真っすぐで芯が強くて優しい男。加賀恭一郎の事をますます好きになってしまう一冊。この本は作中で語られるヒントを元に、真犯人を読者が推理する形をとってて、なので真犯人が誰なのかは最後まで明かされないまま終わる。あの…お恥ずかしながら全く分からなかったので、解説サイト見ちゃいました。

 

麒麟の翼/東野圭吾

日本橋麒麟の像の下で、サラリーマンの男性が息絶えていた。男性はナイフで腹を刺された後、瀕死の状態で像の下まで移動した痕跡があった。さらに現場付近で、不審な若い男がトラックに轢かれ昏睡状態となっていた。その男の持ち物から被害男性の財布や書類が発見され、警察は不審な男を犯人と断定し捜査を始める。なぜ被害男性は、麒麟の像まで移動する必要があったのか?若い男は本当に犯人なのか?加賀恭一郎と松宮がその真相に挑む。

 

加賀恭一郎シリーズ第9弾!東京の景色に想いを馳せながら読みました。七福神巡りやってみてぇ~!加賀恭一郎と松宮が自分の足でコツコツと地道に証拠を集め、小さなきっかけから、被害者の行動の謎や、今まで不審だったキャラの言動が急に繋がってくる爽快感が凄い。真相が明かされた時、怒りやら虚しさやらで心にぽっかり穴が開いたような感情になった。家族愛の要素も強く、取り返しがつかなくなった後に思い知る愛情の深さに、心がずしんと重たくなる。心が揺さぶられっぱなしの一冊でした。

 

祈りの幕が下りる時/東野圭吾

<あらすじ>とある演出家の元を訪ねた女性が、遺体で発見された。さらに現場の近くで別の焼死体が発見され、刑事の松宮は二つの事件の関連性を疑う。一方刑事の加賀恭一郎は、焼死体の遺品から、孤独死した自身の母親との繋がりを発見する。加賀と松宮が事件の真相を探る。

 

加賀恭一郎シリーズ第10弾!正体不明の人物が何人も出てきて、謎が謎を呼ぶ複雑なトリック!そして明かされた真相は、あまりに重たすぎる。登場人物の心情が臨場感たっぷりに伝わってきて、途中何回も目頭が熱くなった。美しくも悲しすぎる愛情に、心臓をえぐられること間違いなし。東野圭吾さん、登場人物に試練与え過ぎでは?

そして加賀恭一郎と母親の関係が大きく進展する物語。シリーズを順に追っていくと、ここまでの加賀恭一郎の葛藤などいろんな場面が思い出される。ちなみにワタクシ、これまで加賀恭一郎シリーズを1から順に読むことをしてこなかった者なんですが(読んだ順は4→3→7→9→10)、でも特にレギュラーキャラがあやふやになることなく読めてる。でも7作目の『赤い指』は、松宮の初登場や、加賀恭一郎との関係性、加賀の父親の話も出てきて結構重要なので、私みたいな順番めちゃくちゃに読む勢は『赤い指』は先に読んどいたほうがいいかも。ちなみに法月綸太郎とか岬洋介も順番めちゃくちゃに読んでて、ここまで来るともう逆にそういうこだわりを持ってる人みたいになってる。

 

容疑者xの献身/東野圭吾

<あらすじ>天才数学者で高校教師の石神は、アパートの隣人の靖子とその1人娘が、前夫を殺害してしまったことを知る。靖子に密かを想いを寄せていた石神は、2人を救うために完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、この謎に挑むこととなり…。

 

ガリレオシリーズの長編!ガリレオらしい化学を使った謎解きの要素はないけど、ハンパねえ発想のトリックに圧倒される。そして何よりも、物語が素晴らしすぎる。私がこれまで読んだあらゆる小説すべての中で、この作品が一番心に残ったかも。たまにふと内容を思い出して、胸がいっぱいになる時がある。とにかく素晴らしい名作!読書ってほんと楽しいなって改めて思えた。この本に出会えてよかった~。

読んだ後映画も観たんだけど、堤真一さんが素晴らしかった。同時進行で龍が如く7をプレイしてたんですが、沢城のカシラとの温度差で風邪ひくかと思った。この堤真一さんなら前夫を自らやってるネ!

 

真夏の方程式/東野圭吾

<あらすじ>美しい海辺の街、玻璃ヶ浦。小学生の恭平は、叔母一家の経営する玻璃ヶ浦の旅館で、夏休みを過ごすことになる。一方で仕事で街を訪れた物理学者の湯川も、その宿に宿泊する。翌朝、もう1人の宿泊客が死体で見つかった。その客は元刑事で、かつて玻璃ヶ浦に縁のある男を逮捕した過去があった。これは事故か殺人か?

 

再びガリレオ長編シリーズ。湯川と恭平の交流に心が温まり、海辺の田舎町の描写に癒される。自分も夏休みを体験したような、美しい情景の数々が心地よい。作中で様々な事件が起こるんだけど、ほとんどが善意や思いやりから引き起こされてしまったもので、優しさが相まって余計切ない結末に。たくさんの愛に溢れた物語。でも、あの人のその後の罪悪感を想うとやるせない。そこに愛はあるんか…?

 

マスカレードホテル/東野圭吾

<あらすじ>都内で起きた連続殺人事件。それぞれの事件現場には、次の殺人を示唆する暗号が残されていた。そして次の殺人現場とされたのは、一流ホテル・コルテシア東京。刑事の新田はホテルマンとして潜入捜査に就き、教育係の山岸と共に、怪しい客たちと対峙していく。

 

一流ホテルマンの業務が事細かに描かれていて、お仕事小説としても楽しい。最初はお互いのプロ意識がぶつかって噛み合わない新田と山岸だけど、仕事を通して絆を深めていく流れが王道だけど胸アツ。客との間に小さなトラブルが次々と起こるんだけど、テンポ良くて読みやすいし途中でだれないし、さすがの東野圭吾さん。ラストはギリギリまで二転三転する展開に、ページめくる手が止まらん。大興奮のまま一気読みしました。ミステリー要素も凄く良いんだけど、お仕事小説としての深さを推したい。山岸がこのホテルに就いた経緯も熱いし、山岸の上司がすばらしい人格者で、私もこういう人たちの元で働いてみたいなって思った。木村拓哉さん主演の映画も観たよ。全員ハマり役だけど、小日向さんがあまりもドンピシャだった。

 

白夜行/東野圭吾

<あらすじ>大阪の廃ビルで男が殺され、容疑者は次々と浮かぶが、結局事件は迷宮入りしてしまう。その後、被害者の息子・亮司と、容疑者の娘・雪穂は、それぞれが全く別の人生を歩むことになる。しかし2人の周囲に、いくつもの不穏な事故や事件が起き始める。

 

約850ページと鈍器並みの分厚さになかなか敬遠してたんやけど、いざ読み始めると手が止まらなくて一気読み。とにかくめちゃくちゃ壮大な物語。亮司と雪穂の約20年間分の生き様が、第3者視点で交互に語られながら物語が進んでいく。2人ともどこか得体が知れないのに、これだけ長い間人生を追ってるとだんだんと愛情が湧いてくる。そんな中で徐々に明かされていく真相に、心が蝕まれるような不快感が湧いてくる。読後感はあまりにも切ない。けどこうなるしか道はなかったのかも。

 

その女アレックス/P・ルメートル

<あらすじ>自他共に認める美人のアレックスは、突如見覚えのない男に誘拐され、地下室で檻に幽閉されてしまう。死を目前にしながらも、アレックスは決死の脱出を試みる。一方警察にも誘拐の目撃情報が入ったことで捜査が始まるが、不思議なことに家族や職場からの捜索願いが全く入らない。誘拐されたのはどこの誰なのか?

 

物語全体が常にジェットコースターのような緊張感。急上昇、急降下、急旋回を繰りかえすアトラクションみたいな感じで、怒涛の勢いで読まされました。圧迫感のある苦痛なシーンや残酷描写が続いて、途中ちょっとしんどくなるけど、たまにやってくる刑事トリオのおばかシーンで癒されるからヨシ。この本で一番語りたいのが、カミーユ、ルイ、アルマンの刑事トリオ。彼らがあまりにも良い。小柄だけど強面の警部カミーユ、イケメン富豪刑事のルイ、超ドケチしみったれ刑事アルマンと、キャラが立ちすぎててアレックスの事件よりも3人の動向ばかり気になってしまう。SNSでこの3人が『海外版こち亀』って言われてて大笑いした。特にアルマンのドケチムーブが毎回めちゃくちゃ面白くて、隙あらば後輩や一般市民にたかったり、盗み食いしたり、拾いタバコしたりと、いちいち笑かしてくれるんだよな。でも仲間との絆を感じる熱く小粋なエピソードもあったりで、惹きつけられてしょうがない。

『その女アレックス』を含めた、『カミーユ警部シリーズ』3部作だけど、後から知ったんだけどアレックスは2作目で、作中でしっかり1作目のネタバレが書かれてるんだよね。これは順番に読まなきゃダメなやつ。アレックスがあまりに有名なもんで、何も考えずアレックスから読んじゃった。シリーズの他作品も読んでみたいんだけど、アレックスがかなり胃に重たかったので、手を出すにはそれなりの覚悟がいるな。

 

今回は以上!!海外の作家さんの本も読んでるんだけど、バカあるあるだと思うけど人物名や地名が覚えられない!なので冒頭の登場人物紹介がかなり役立ってます。カタカナってなかなか入ってこないんだよな。ロックマンエグゼシリーズに出てくるプログラムくんがセリフ全部カタカナで、幼少期に読むのめちゃくちゃ苦労したもん。(なんの話?)